イラスト:大高郁子
還暦を過ぎて新しい仕事を始めたら心身に張りのある日々が得られる? 特に身体を動かす仕事で得られるものは、お金だけでなく、人それぞれに《いいこと》があるようです。60歳を超えてそんな職を得た女性たちに話を聞きました。たとえば大手住宅設備会社を定年退職したのち、63歳でマンション管理人を務めるふみ子さんの場合は――。(取材・文=野原広子 イラスト=大高郁子)

少々ハードな労働で得る達成感

ライターをしつつ、さまざまなアルバイトをしてきた。これまでで私が最も《変化》した仕事は、40代半ばで8ヵ月働いたビジネスホテルの清掃だ。ユニットバスを丸洗いし、ベッドを整え、床に掃除機をかける。13室を4時間で仕上げると、疲れて口もきけなかった。

おかげで春から夏、秋が過ぎた頃には13kg減。会う人、会う人が「別人!」と目を丸くした。「スタイルがいい人だったのね」とも言われたっけ。「やればできるじゃない」という自信と、身体を動かす少々ハードな労働で得る達成感は、それまで味わったことがなかった。あの感覚を再確認したくて、ときどき今も肉体労働系のアルバイトをしている。

1年前、19年間ともに暮らした飼い猫が息を引き取ったときもそう。悲しみのせいか身体が地面から浮き上がったようで、どうにも生きている実感がない。それで《キツイ》とウワサの通販の倉庫作業をした。

夏の盛り、倉庫の中のカーゴを押して、あっちに行き、こっちへ運び。夕方、作業が終わると、下着まで汗でビッショリになり、歩数計は1日3万歩弱。この作業を3日続けたら、やっと自分の身体に感覚が戻ってきた。

身体を動かす仕事で得られるものはお金だけではない。人それぞれに《いいこと》があるようだ。60歳を超えてそんな職を得た4人の女性たちに話を聞いた。