夫に人格を否定され続けて

東北地方に住む契約社員の山本みゆきさん(37歳・仮名)は、小学4年生の子どもを持つシングルマザー。

「あの特別定額給付金10万円が私と次男の2人分もらえて、一息つけました」と話す。

公務員の夫(37歳)とは離婚が成立していないが、20年3月に次男を連れて家を出た。1年間かけて準備し、息子と2人でシェルターに逃げ込んだのだ。

「転勤族の夫と地方の官舎暮らしをしているとき、私は近所付き合いのストレスから精神的に追い詰められ、心療内科でパーソナリティ障害だと診断されました。アルコールに溺れ、死にたい衝動もあって、子どもたちの前で自傷行為もしていたのです」

夫は病気を理解することができず、家事や育児をしないのは、単なる「怠け」と捉えた。3年ほど前から夫が財布を握り、モラハラ、経済的DVが始まった。その後故郷に転勤になったものの山本さんの病気はよくならず、夫に人格を否定され続けた。

「一緒に暮らすのはもう限界」と感じた19年に、女性向けのシェルターを紹介された。そこで、「あなたのされていることは、DVの典型ですよ」と言われる。

何か呪縛が解けたような気がした。離婚を子どもたちに打診すると、中学生の長男は「転校するのは嫌」と父親と一緒にいることを望んだ。次男は「ママと行く」と言う。少しでも貯金しようと、知り合いの仕事を手伝い始めた。