「子どもはよく動くけど、とくにうちの孫はやんちゃで絶えず走り回っている。半日も預かると、こっちはトシだし、ヘトヘト。孫がアザやたんこぶをつくることもあります。男の子はそんなの普通だと思うけど、嫁は『気をつけて見ていてほしい』と言ってくる。だんだんイラッとくるようになって。私が食べさせたものでおなかでもこわしたら、何を言われるかわからないので、冷たいものは避けたり。体力だけじゃなく、そりゃあ気もつかいます」

そんなある日、“事件”は起きた。嫁から「保育園のお迎えに間に合わないのでお願い」というメールがきて、孫を迎えに行ったその帰り。突然駆け出した孫を、「危ない」と追いかけようとして、光枝さんは転んでしまった。病院で診てもらうと、左手の中指と小指にヒビが入っているとのこと。

「孫は無事。私も大ケガじゃなくてホッとしました。ところが、電話で事情を伝えたあと、うちに来た嫁が開口一番、『うちの子は大丈夫?』。私のケガを気にかける様子も、申し訳なさそうなそぶりもなし。さすがの私も頭にきて、ピシャリ、言いましたよ。『子どもが心配なのはわかるけど、それはないんじゃないの!?』って」

光枝さんの剣幕のせいか、しばらくは嫁から孫のことを頼まれることはなかったが、それも1ヵ月だけ。「お願い」のメールや電話がまた頻繁に来るようになった。

光枝さんはこれまでと対応を変えることにした。「友達と約束がある」とキッパリと断ることもあれば、あえてメールを無視することも。「気がつかなくて」「携帯電話を家に置いて外出中だった」と、時間がずいぶんたってから折り返す。光枝さんなりの抵抗だ。

「本当に困っているときもあるだろうし、あまり嫁に邪険にしていると孫に会えなくなるかもしれない。だから3回に1回は頼みをきくようにしていますけどね」

嫁は、光枝さんの“造反”に気づいているはず。関係は少しギスギスしたままだが、何でも引き受けてストレスをためこむより、今のほうがずっと気持ちはスッキリ、と光枝さんは言う。