「親にばかりお金を使えないよ」

「妹は最初、『お父さんのことは好きだから面倒は私がみる。お金も出すから、いい施設に入れよう』と気前のいいことを言っていたのに、最近では『私は独身だし、まずは自分の老後を考えないとね。親にばかりお金を使えないよ』と言うようになりました。

母も母で、昔から否定的なことしか言わず、相手を不愉快な気持ちにさせる人なので、妹の気持ちはわからなくもないですが……。介護される立場になったのだから、少しは謙虚になってもいいのに」

我を通す母と妹に辟易しながら、時間をやりくりし、百合子さんだけで介護を続けて約半年。今や母は家のことはなんとか自分でできるようになり、父を自宅に帰したいと言うようになったという。

父が入る老健では、月に1回10分間のオンライン面会の機会が設けられており、母、百合子さん、百合子さんの子どもたちで面会を重ねてきた。妹も父の顔が見たいだろうと思い誘ったが、「直接会えないなら私はいいや。どうせお母さんも来るんでしょ?」と拒否。父への想いよりも、母への嫌悪感が先に立つのかと、残念な気持ちになったという。

「父は、かろうじて家族の名前や顔を覚えている状態。妹にも今のうちに会ってほしいのですが、すでに半年以上顔を合わせていません。何より父が実家に戻ったら、母がいる限り、妹は寄りつかない。週末だけ実家に泊まるか、いっそ仕事を辞めて実家で同居するか。はたまた稼ぎを全部親につぎ込んで、施設に入ってもらおうか。

あれこれ考えるうちに、『なぜ私だけがこんなに追い詰められているんだろう』という悲しみがこみ上げてきて……。夫に愚痴っても、『子どもには一切迷惑をかけない』というスタンスの両親を持つ彼には、この大変さが理解できないみたい。なんだかなあという気持ちです」

「介護費用は親のお金だけでやりくりする」「施設に預けることは悪いことではない」など、介護の常識は子どもの負担を軽減する方向に変わりつつある。

しかし、「そう簡単にはいかないのよ!」というのが現実なようだ。親を想う気持ちがあるからこそ、子どもは我慢を強いられ負担を感じてしまう面もあるのだろう。どうか上手にストレスを解消しながら日々を過ごしてほしいと心から願う。

 


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【3】「親にばかりお金を使えないよ」折り合いが悪い母と妹。挟まれる苦悩