離れて暮らす親がケガをした、認知症になった……介護を抱える子どもにとって、コロナのもたらす影響は大きいようです。3人の女性のヘトヘトな日々は――。3人目の清水さん(仮名)は、妹と母親に翻弄されて…(取材・文=上田恵子)
折り合いが悪い母と妹。介護を機に関係が悪化して
「私しか親をみる人間がいない以上、親の感染リスクばかり心配してはいられません」と話すのは、千葉県に住む清水百合子さん(仮名、58歳)だ。
自宅から両親が暮らす実家までは、電車で2時間ほど。父は数年前から認知症の症状が出ていたが、母が家で世話をしてきたという。ところが20年の夏、母が転倒して背骨を圧迫骨折。急きょ父には老健のショートステイに入ってもらい、自宅療養する母を百合子さんが通いで介護することになった。
「骨折直後は3日に1度のペースで通っていました。私には2歳下の妹がいて、最初のうちは彼女も私と交代で実家に行ってくれていたんです。でも2、2回足を運んだと思ったら、『やっぱりお母さんの世話は無理だわ。私は手を引く。その代わりお金は出すから』と一方的に宣言されて……。私も平日は毎日仕事をしているし、家庭もあるのに、と落ち込みました」
百合子さんの妹は、大手メーカー勤務のキャリアウーマン。実家から1時間ほどのところに購入したマンションで一人暮らしをしている。「妹のほうが実家までの距離も近いし、仕事もコロナ禍でリモートになったから協力しやすいと思ったんですけど……」。
母と妹は昔から折り合いが悪く、顔を合わせればケンカになる間柄なのだという。今回は、父の介護費と自分の治療費で支出がかさみ大変だと愚痴をこぼした母を、妹が「貯金をしていないから、こんなことになるんだよ!」と責め立てたことで言い合いになり、「じゃあ今後は一切頼らない!」と再び関係が悪化してしまった。