『風、薫る』場面写真
(『風、薫る』/(c)NHK)
放送中の連続テレビ小説『風、薫る』(総合、毎週月曜~土曜午前8時ほか)。田中ひかるさんの『明治のナイチンゲール 大関和物語』(中央公論新社刊)を原案に、看護師という職業の確立に貢献した大関和と鈴木雅をモチーフにしたバディドラマ。主人公の一人、一ノ瀬りんを演じているのが見上愛さん(25)だ。新潟の村で起こった赤痢の感染拡大をきっかけに、看護婦に戻ることを決意したりん。これからは、看護婦という仕事への理解を広げ、どう社会に根付かせていくのかが描かれていく。見上さんに作品に込めた思いを聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部)

心を使う仕事

<患者の気持ちに寄り添い、看護の仕事に向き合ってきたりん。しかし、ある患者との別れで大きな壁にぶつかってしまう。14週から15週にかけて描かれたのが「看護とは何か」という大きなテーマだ。患者の山本はがんが再発してしまい、手術を受けたものの回復の見込みがなかった。毎年花火の日には妻と牛鍋を食べていた山本。体調不良で見舞いに来られない妻に会いに行きたいと願うが「命の保証はできない」と医師から断られてしまう。「妻に後悔をさせたくない」と山本はりんに懇願。りんは迷った末に山本の願いを受け入れ、自宅まで連れて行くことに。妻と無事会えた山本だが、病院に戻ると体調が急変して亡くなってしまった>

クランクイン前は、看護婦の役を演じるにあたって技術面を磨かないといけないと考えていたんです。でも実際に自分が演じたり、看護師の方とお話をしたりするなかで、技術以上に患者さんの心をみる仕事だと思うようになりました。患者さんが病気と付き合いながら、どういう人生の選択をしていくのか。一人ひとり違う人生を歩んでいるからこそ正解がない。看護師の方は、何が患者さんの幸せなのか常に考えられていて、私の想像以上に心を使う仕事だという新たな発見がありました。

りんと山本さんについて描かれた14週と15週の撮影は難しかったです。りんは、「正しいほうを選択する」ことを大事に生きてきました。でも、気持ちに寄り添った結果、山本さんは亡くなってしまい、「人として正しいこと」と「看護婦として正しいこと」の間で揺れます。看護する側であるりんの心が病気になっていく。自分のしたことが本当に良いことだったのか迷い、現代で言うならば適応障害に近い状態になっていて。どう表現したらいいのか悩みました。

『風、薫る』場面写真
(『風、薫る』/(c)NHK)

<山本が亡くなって以来、りんは看護をしようとすると手が震えるように。十分な看護ができなくなったりんに直美は看護婦を辞めるように伝える。実は直美は捨松に相談して、りんの次の仕事を探してもらっていたのだ>

直美や捨松さん、そして家族の尽力で新潟の女学校の寮の舎監兼教師となることが決まったりん。いったんは看護の世界から離れることになります。りんは、これから正しさとは何かを考え、「そもそも正しさは一つじゃない」と気づいていくでしょうし、これまでいかに自分が恵まれていたのか自覚して成長していくのかなと思っています。