新しいノートを前にして
高校生活にも、ようやく慣れた頃のこと。ある時、私は使い終わった数学のノートを何の気なしにパラパラとめくっていた。理数系は大の苦手で、数字や記号が乱雑に散らばる悪戦苦闘の跡を眺めながら、思わず苦笑してしまう。
すると、ふいに心の奥底で何やら覚えのある感情がうごめき始めた。こんなことに新しいノートを使うなんて……。これはチラシノート事件を起こした、あの幼い日の「紙」への熱い思い、愛情、そして母譲りのもったいない精神だ!
そこで私が再びチラシノートの製作に取りかかったかというと、さすがにそんなことはしなかった。何といっても花の女子高生、思春期真っ只中。人目は気になる。すごく気になる……だったらパッと見、バレなければいいのだ!
ついに私は納戸から、例のチラシの束を持って来た。数学のノートと同じサイズに切って、まずは3枚ほどノートの最終ページと裏表紙の間に挟み込んでみた。これは立派なルーズリーフではないか。チラシを追加していけば、永遠に新しいノートを買わずにすむ。大成功だ。
これもまたかなり昔の話なので、細かいことはよく覚えていないが、先生にとがめられたり、同級生に笑われたりということは一度もなかったように思う。私もそれなりに用心して、授業中以外はカバンの中に入れておいたが、きっと皆見て見ぬ振りをしてくれていたのだろう。
カトリック系のミッションスクールだったので、愛の心で。そういえば、あの時の担任の先生はマ・スール(修道女)だった……。