わが家の経済状況を心配する先生

早速作業に取りかかる。《特売》の文字が躍る面を内側にして、角と角を合わせてできるだけキッチリと半分に折る。折ったものを重ねてホチキスで留めると、見事20ページほどのノートが完成した。そして翌日、ランドセルに入れて意気揚々と学校に向かったのだった。

数日後、担任の先生がいきなり家にやって来た。私のチラシノートを見て驚き、我が家の経済状態を心配してくれたのだ。父親を戦争で亡くしたという先生は、苦労人だけに思いやりのある人だった。国の援助制度について、優しく、そして実に細かく母に教えてくれたそうだ。

何せ大昔の話なので、くわしいことは覚えていない。ただ、先生が帰った後、激怒した母の顔だけは鮮明に記憶に残っている。

「何であんなことをしたのっ! みっともない!」。私の肩をつかんで揺さぶりながらそう繰り返す母の目には、涙が浮かんでいた。言い訳も謝ることもできなかった。母の剣幕におののいたからではない。親に恥をかかせてしまったという事実が、子供心にも大きなショックだったのだ。

そんな少々切ないエピソードも、やがて食卓での笑い話となり、誰も口にしなくなっていった。それと同時に、私の紙へのこだわりも薄れていったかに思えたのだが……。