「おいしくない」とは絶対に言わない

小林 オレは樺太生まれで、13歳の時に終戦を迎えた。15歳まで過ごした樺太時代はよく魚釣りに行っていたから、やっぱり魚料理が得意でね。

中村 お魚は、怖くてさばけないわ。料理は楽しいですか?

小林 楽しいよ! それにすごく奥が深い。

中村 うちの作曲家のじいさんも料理が楽しいらしくて、変なものを作っちゃ、「うまいぞ、食ってみろ」ってすすめてきます。そのことに、ちょっと参ってて。(笑)

小林 変なものって?

中村 《白菜の丸ごと煮》とかいう、白菜が丸のまま入った鍋が出てきたことがあったのだけど、白菜ばっかり食べられないじゃない?

小林 寒い季節の白菜はおいしいけどね。

中村 確かに、ほかの時に作ってくれた白菜とベーコンのお鍋はおいしかった。でも一度褒めたら、今度はそればっかり作る。「♪今日も白菜、明日も白菜、これじゃ年がら年中ハークサイ」(大正時代の流行歌「コロッケの唄」のメロディで)。ただね、ヘンテコなものでも、私は絶対に「おいしくない」とか「なにこれ?」って言わないようにしています。

小林 大事なことだね。味の好みもあるから、口に合う合わないは人それぞれ。家族とはいえ黙っているのが礼儀。けなされると、やる気が潰れてしまうから。

中村 家族同士にもエチケットが必要よね。私が料理に失敗しても、夫や子どもたちは、一度も「マズい」とは言わなかった。夫が子どもたちに「言ってはいけない」と教えていたみたいで。(笑)

小林 それは大切な思いやりだ。