自分らしく、最期を迎えたい。そのための準備に張り切る姿は、 周囲から見ると思わず苦笑い──ということもあるようです。7人の女性たちがホンネを明かしてくれました(構成=中岡ひろみ)

生前整理で足腰を鍛える!?

かつて5人家族が住んでいた2階建ての一軒家に、今は1人で暮らす89歳の母。買い物は自分で行き、料理も食べたいものを気ままに手作りしています。「食が細くなって痩せた」「物忘れがひどくなった」など、年齢なりの衰えをグチるのが日常。

そんな母は、「私が死んだあとにあんたたちが困るだろうから、いろいろ捨てておかないと」と、不用品の整理に精を出しています。荷物がある2階の4部屋と1階を、日に何度も行ったり来たり。今日は和服、明日は古本、ある日は茶道具......。そのたびに業者を呼んだり、段ボール箱をリサイクルショップに発送したり。

それだけでなく、1階の寝室にある重い布団を、しばしば2階のベランダに干しに行くのです。そのおかげか、年齢の割に足腰が丈夫。終活にともなう階段の昇降が健康寿命を延ばしているのは確か。でも、さすがに布団を担いで階段を昇り降りするのはやめてほしいです。(主婦・63歳)

 

オタク母は用意周到!

62歳の母はパソコン好き。銀行振り込みも買い物もネットで済ませます。国内外のネットオークションも活用しているし、ネット証券でデイトレードを行い、リアル店舗がないネット銀行にも預金があります。SNSもmixi、Twitter、Facebook、LINE、Instagramと流行に合わせて増やしてきていて、私から見ると完全にネット依存症。

最近、終活を意識したのか、私にIDやパスワードがびっしり並んだ一覧表を見せてきました。「表のプリントアウトとデータが入ったUSBメモリを〇〇銀行の貸金庫に入れておいたからね。ネット証券やネット銀行は相続の際にIDが必要だから。死んだらすぐに手続きするのよ! SNSはタイムラインに死亡通知を出して、三回忌が過ぎたらアカウントを削除して」とのたまう。

そんな面倒なことできるかい! 20〜30年後に私のほうが先に逝くかもしれないと思いつつ、今は聞き流しています。(デザイナー・31歳)

 

老人ホームの忖度

独身の85歳の叔母が、長年住んでいたマンションを処分して、老人ホームに入居することになりました。運ぶ荷物は段ボール箱10個分。叔母がホームに引っ越した翌朝に私がマンションから荷物を発送、その日の夕方6時にホームに届く段取りに。ホームの職員もいるから、私が受け取りに行くまでもないと思っていました。

ところが数日後、叔母から電話が。「荷物が届いてないけど、どうなってるの?」「6時に到着したはずでしょ!?」「夕飯中だったのよ。困りますと言って追い返してやったわ」「え〜!」。昔からわがままな叔母でしたが、この期に及んでそれを発揮するとは!職員に電話を代わってもらうと、荷物はホームで預かってくれていました。

なんと叔母を認知症だと誤解、ひとまず荷物を隠しておき、穏便に渡すタイミングを計っていたとか。認知症慣れしたホームの忖度に、驚くやら感心するやら。(自営業・58歳)