わが家のお墓の行方は?

夫も私も一人っ子で、子どもは娘が1人だけ。東京と伊豆にある双方の実家の墓の整理が課題です。昨年、一人暮らしの義母が85歳で亡くなり、夫と緊急会議。まずは東京にある夫の家の墓石を改修することに。

かの谷崎潤一郎は2つの墓石に「寂」「空」の文字を刻み、片方を自分たち夫婦用、もう片方を妻の妹夫婦用にしたそうです。そんな設えをする身分ではありませんが、墓石の「〇〇家之墓」の文字を削り、「慈愛」の2文字を刻みました。これならどんな宗派でもオッケーとのこと。私も入るし、いずれは伊豆にある実家の墓をたたんで両家の墓をひとつにし、今82歳の実母も東京の墓に、という目論見があります。

しかしネックは私の父方の叔母、84歳。今も伊豆まで墓参りに行くのが生きがいなのです。母と叔母とどちらが先に逝くか? 口うるさい叔母の機嫌をとりつつ、墓じまいの時機をうかがっているところです。(会社員・60歳)

 

参列者ゲット大作戦

実家の父は、80歳を過ぎてからグラウンド・ゴルフを始めました。理由は、自分の葬式にたくさんの知り合いに来てほしいからだとか。実は、10年前に卓球を始めたときも参列者確保のためと言っていました。卓球で10人は確保したようですが、それでは不足ということらしい。

サラリーマンとして40年以上勤め、最後は会社の役員だった父。昨今は密葬も増えているのに、父はいまだに何百人も訪れる、自分が現役だった頃に参列した葬式をイメージしている模様。新盆には精霊送りの舟を出すようにという要望も。

謹厳実直で地味な父ですが、死後については意外や派手好み。自分の葬儀を生きがいに、ますます意気盛んです。(パート・46歳)

最期かもと覚悟したら

60歳で大きな手術をすることになった父。死をも覚悟したのでしょう。急に宗教関係の本を、ジャンルを問わず読みあさり始めました。家は神道でしたが、それだけでは不安になったのか、死を恐れない気持ちになれる信仰を求めたようで、仏教、カトリック、プロテスタント、イスラム教と、各宗教について学び、なんと最後はカトリックの洗礼を受けました。

神棚には神社の札と亡き祖父母の遺影のほか、『般若心経』からマリア像まで、父の魂の彷徨の軌跡が残されています。あれから20年、父がまだ元気なのは、てんこ盛りの神々のご加護ゆえかしら。(会社員・44歳)

 

派手なペアの骨壺

通販会社で働いている友人によると、昨年の「お彼岸特集」では絢爛豪華な九谷焼のペア骨壺セットがよく売れたそうです。「購入者は70代以上の男性が多いの。あの世でも派手に過ごしたいのかしら」と話が盛り上がったことがありました。

さて先日、父方の叔父が78歳で急逝。そのとき火葬場で出てきたのが、極彩色の花模様に金の縁取りの骨壺!「これが例の骨壺か!?」と驚いていると、「お父さん、生前にペアで注文していたんだって」と従妹が耳打ち。「それなら叔母さん用の骨壺もあるわけ?」「そうなのよ!でも母はわび・さび好みでしょ。あんな派手なのはイヤだって......」とコソコソ話。

叔母は参列者にソツなく挨拶しながら淡々とお骨を拾っていましたが、心中はいかに。死後に妻との「ペア」を望んだ叔父の、ロマンチックな心情に思いを馳せた葬儀でした。(パート・56歳)