きょうだいはいても、すでに他界していたり、あるいは仲が悪かったり……。子どもがいないおじやおばの看取りを引き受けるのは、甥や姪しかいない。そんな事態に直面した3人の本音は。
ケース1 沙織さんの場合

母や妹もいるのに負担は私ひとり

東京都内で夫とふたりの娘と暮らすイラストレーターの沙織さん(50歳=仮名・以下同)。14年ほど前、彼女のもとに、母親の姉から手紙が届いた。伯母は、独身でバリバリ働き、定年後は長崎県の海辺に建つマンションを購入。優雅なひとり暮らしを満喫する、元祖キャリアウーマンだ。

──70歳の誕生日を迎えた今日、あなたにお願いの手紙をしたためます。今後、介護が必要な身になったり、死を迎えた場合、さまざまな手続きや整理が必要です。そのすべてをあなたに一任したい。永代供養のお墓も購入したので、よろしく。なお、お金の心配はいりません──。

「えっ、なぜ私!?ですよ。だって、伯母より一回り下の私の母は、当時まだ58歳と若かった。しかも、私の妹はお隣の佐賀県に嫁いでいたんですから。ふたりとも専業主婦。なにも、働く主婦の私を選ばなくてもいいんじゃない?って。ただ、よくよく考えると、伯母がいわゆる身元引受人に私を選出した理由に、なんとなく察しがついたんです」

女性は専業主婦に収まるのが主流の時代、職業婦人として生きた伯母は、周囲の専業主婦と対立することも多かったらしい。そのせいか、専業主婦を敵視する発言がやたらと多いのだ。「夫の収入で生きているくせに、夫の愚痴ばかりこぼす」など。

そこへきて、沙織さんの母も妹も専業主婦。ふたりが伯母宅を訪れた後などは、たいてい沙織さんの電話が鳴る。そして「勝手に私の部屋を片付け始めて、何がどこにあるのかわからなくなった」「『料理、いい加減覚えたら?』とこれ見よがしに大量の料理を作っていって、ありがた迷惑」など、不平不満のオンパレード。最後は「やっぱり、仕事を持つあなたと話していると楽」が常套句とか。

「そういうストレートな性格の伯母のことは大好きです。だから、身元引受人になった。と同時に、『当面の軍資金』と100万円送ってくれたので、金銭面では問題ありません。でも、何が負担かって、東京から長崎までの移動時間。イラストの仕事は常に納期がつきまとうから、急にお呼びがかかると困るんです」