急な呼び出しが増えてきて
伯母が元気なうちは、平穏だった。が、その後、84歳になった伯母が肺炎で入院。病院から電話が来て、「軽い症状ですが、念のため来てください」。やむなく駆けつけると、医師からの病状説明は30分に満たなかった。しかし、飛行機の最終便を逃してしまった沙織さんは編集者に平謝りし、イラストの締め切りを1日遅らせてもらったという。
最近では、伯母が自転車とぶつかる事故が勃発。今度は警察から呼び出された。すり傷程度で済んだものの、大事を取って検査入院。病院や警察、加害者とのやり取りで2日間拘束された沙織さんは、その間に依頼があった緊急の仕事を泣く泣く断ったそうだ。
「フリーランスの仕事は信頼第一なのに……。伯母に『仕事が立て込んでいるときだけ、母や妹に頼んじゃダメ?』と打診しましたが、『あの子たちに、有事の対応能力があると思う? オロオロするばかりで、こちらが不安に陥るに決まっている』と。もう諦めました」
とはいえ、それほど遠くないであろう伯母の死後に残される、膨大な量の身辺整理が恐ろしくてたまらない。
「マンションの売却、相続手続き、母や妹が『掃除しなさい』とぼやくのも無理ない、モノで溢れかえった部屋の片付けなど、すべて私主導でやらないといけないんですよね……。こうした怖い想像は、もうしばらく遮断していたい。夢に出てきて睡眠不足になりそうだから」
と、沙織さんはため息をついた。