20代の初め、不妊症と診断

「子どもを産むのは難しいでしょう」とお医者さんに言われたのは20代の初めの頃。不妊症という現実を突然つきつけられ、ショックでした。それまでは、夢は努力すれば叶うと教わってきたし、自分でもそう思ってきた。なのに、私には頑張ってもどうにもならないことがあるんだ、って。

両親に伝えると、平静を装っていたけれど悲しそうでした。母から、「よその子どもを見てお父さんが泣いていたわ」と聞かされた時は、つらくて返す言葉もありませんでしたね。両親は、娘は当たり前のように結婚して、当たり前のように孫ができると思っていたはず。それを叶えてあげられないことに、絶望感しかなくて……。

家族の中ではこの件についてはふれないでおこう、という空気が漂い、私自身も20代の頃は問題を直視しないようにしていました。友人と話す時も、子どもの話題になるのを避けていたように思います。

おつき合いした男性には、子どもができないということを言わないのはフェアじゃないと考え、伝えてきました。そのことを理由に離れていった人はいなかったけれど、常に私のほうが相手を好きになりすぎないように自制していたような気がします。

私は自分が不妊症であることを不幸だと思っていましたが、私とかかわったために相手まで自分の不幸に巻き込むことがつらかった。だから、私が《偏屈で結婚に興味のない人》を装えば、問題は私の中だけで終わる。それが一番いいんだと思っていました。

そのくせ、好きな人と一緒にいたい、幸せになりたいという気持ちもあって……。めんどくさい人間でしょう(笑)? いろいろとつきつめて考えずにはいられない性格なのです。