「《どうして養子縁組をしてまで子育てをしたいのか》の明確な答えは今も見つかっていません。けれど、子育てをするなかで、この選択が間違っていなかったことだけは確かだと思っています。」

どうして養子縁組をしてまで子育てをしたいのか

私たちは、子どもを新生児のうちから育てたいと考えていたため、その可能性が高い特別養子縁組を希望しましたが、斡旋団体の担当者から、「どんな赤ちゃんが生まれてくるかわかりません。健康な子ばかりではないし、とても手のかかる子かもしれない。あなたは責任がとれますか? 愛してあげられますか?」という問いをつきつけられました。

それだけの覚悟を持ってくれないと困ります、ということなのでしょう。でも、まだつながりがなく、生まれてもいない、想像もできない子どもを「愛せるか?」と問われ、まじめに考えれば考えるほど不安になってしまったのです。

子どもを育てたいという気持ちは確かなものでしたが、一方で、夫婦2人だけで生きていくのも幸せじゃないかと問われれば、まったくその通りだと思う。ではなぜ、それでも私は子どもがほしいのか。どうして養子縁組をしてまで子育てをしたいのか。

この「どうしても子どもを育てたい」理由が、「子どもができない自分を克服するため」だったら、養子縁組はするべきではないのかもしれない。自分に問いかけてみたけれど、「克服するためではない」とは、はっきり言い切れなくて。やっぱり、産めない自分を認めたいという気持ちはゼロではありません。

でも、考えに考えた末、それでいいのではないか、と思うようになりました。私の心の中にはいろいろな気持ちがあって、子どもを育てたい理由は複合的。ただ、実親のもとで暮らすことができない子どもをサポートする制度によって、少なくともうちにくる子が幸せになるお手伝いはできるはずです。「どんな子でも大切に育てます」とお返事しました。

こんな迷いの時を経て、ご縁のあった斡旋団体を通して私たちはハナちゃんを迎えることができました。「どうして養子縁組をしてまで子育てをしたいのか」の明確な答えは今も見つかっていません。けれど、子育てをするなかで、この選択が間違っていなかったことだけは確かだと思っています。