ほかへ埋葬させないという住職からの圧力

2人で墓地を見て回り、見晴らしのよい市営の墓所を購入できることに。初期費用の10万円に、墓石代90万円。墓じまいをして遺骨を移すのに40万円。合計140万円かかったが、想定していた予算内で、「安くすんでよかったね」と言い合った。めどが立ち、夫は安心したのかもしれない。その3ヵ月後にあっけなく旅立った。

葬儀の日のこと。わが家が檀家となっている寺の住職が、いきなり「埋葬許可証を預かりたい」と切り出した。ほかへ埋葬させないという圧力を感じる。まだ墓所しか購入しておらず、墓石のことは葬儀が終わってからと考えていた私はうろたえてしまったが、夫の意向を伝え、埋葬許可証は渡さなかった。住職は渋い顔をしていたが……。

葬儀が終わると、石材店から次々と届くダイレクトメールに驚かされる。直接自宅にやってくる業者もいて辟易したので、結局、親戚が勤めている石材店にお願いした。

お墓を移すとなると、さまざまな手続きが必要だった。一つは改葬許可申請書の提出。必要事項を記入のうえ、現在の墓地の管理者、つまり例の住職の署名と捺印が必要になる。申請書には、埋葬されている全員の死亡日、火葬日などを書く欄があった。

舅は私の嫁ぐ前に亡くなっていたため、火葬の日などわからない。義姉も覚えていないと言うので、曖昧な日付を記入した。夫の実家は分家だから義父母だけで済んだが、これが本家なら何十人分も書かされたかもしれない。そう考えると、ぞっとする。