「実家の墓じまいをして、新しい墓を建てないか?」
2年前、そんな夫への見方が180度変わる出来事が起こる。夫が末期のすい臓がんと診断されたのだ。余命わずかと知った夫がまず心配したのは、お墓のことだった。
夫の実家は県内の沿岸部、自宅から車で2時間の場所にある。若い時は「老後は地元に戻る」と言っていた夫だが、東日本大震災による津波の被害が大きかったこともあり、今の土地で最後まで過ごすと決めたようだ。
「実家の墓じまいをして、自宅近くに新しい墓を建てて移さないか」と言う。今は年に一度お参りするのがせいぜいだが、近くに移せば息子たちもまめに来てくれて、将来の負担が少ないと思う、というのが夫の考えだった。
夫が実家の墓に執着しなかったことに驚いたが、むしろありがたい。さっそく義姉に相談したところ、「私はかまわないわよ」と賛成してくれたため、準備を始めた。