イラスト:コーチはじめ
先祖代々の墓を守るというプレッシャーをかんじる、あの人と同じ墓に入りたくない……。お墓の悩みを抱える人は少なくありません。井川さん(仮名)は、余命宣告をされた夫に、「実家の墓じまいをして、自宅近くに新しい墓を建てて移さないか」と言われました。果たしてその顛末はーー

この人と同じ墓には入りたくない!

私が嫁いだ先は、昔ながらの家制度が受け継がれていた。ただ、県内とはいえ離れた場所に住む義父母や親戚と顔を合わせるのは冠婚葬祭のときぐらいなので、《無難な嫁》としてつきあっていれば問題はない。

しかし10年前、私の母が末期の胃がんであることがわかった。毎日病院へ通う私に、見舞いにやってきた姑が、「いつか、私を介護するときの練習だと思ってやってね」とのたまった。実の母親が余命わずかな人に対する言葉だろうか? 怒りから、我慢していた気持ちがプツンと切れる。そのとき、49歳にして初めて思った。この人と同じ墓には入りたくない! と。

母のあとは父、そして姑を相次いで見送った。その間私は、自分のお墓のイメージを着々と作り上げていく。できれば散骨がいいが、樹木葬も悪くない、等々。夫とお墓の話はしなかった。長男の彼は、当然のように両親と同じ墓へ入ると思っていたからだ。いつか墓のことを考えるときがきたら、私だけ散骨か樹木葬にしてと頼もうか、と考えていた。