「テニスは《メンタルスポーツ》と呼ばれるほどダイレクトな形で精神力が試される。1対1で対戦し、最後の最後まで勝敗がどちらに転ぶかわからない。」(杉山さん)

トップアスリートであればあるほど
気分の浮き沈みが激しい

杉山 そうなんです。テニスは「メンタルスポーツ」と呼ばれるほどダイレクトな形で精神力が試される。1対1で対戦し、最後の最後まで勝敗がどちらに転ぶかわからない。マッチポイントを取ってから逆転負けすることも、その逆もあります。相手の気持ちも手に取るようにわかり、そこがまた面白さでもある。

田中 記者会見でさえ本当の自分を見せたくない、それも戦略の一部だと聞いたことがあります。

杉山 はい。先ほどの「弱みを見せたくない」という話にもつながりますが、心理的な駆け引きも重要な競技ですから。

田中 一方、私がやっていたシンクロナイズドスイミングのような採点競技では、自分の演技さえちゃんとできれば良いので、会見などで緊張した顔を見せても構わない。むしろ隠さず本当の自分を見てもらいたいという気持ちがありました。

杉山 へえー、面白い!

田中 トップアスリートであればあるほど気分の浮き沈みが激しいのは、自分の心身の状態を敏感に察知できることとも関係します。「今日はふくらはぎのこの部分が痛い」とチェックするのと同じように、「今日から3日ぐらい落ち込みそう」とか。それを表に出すかどうかはともかく、ちゃんと自分の浮き沈みに気づけるというのは、良いパフォーマンスをするために大事なことです。

杉山 たしかに、心身の状態を常に客観的に把握するのはパフォーマンスを上げるのに重要かもしれません。生きていれば人間必ずアップダウンはあります。それはスポーツマンに限らないですね。

*この対談は6月17日に収録しました

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