杉山さんはプロのテニスプレーヤーとして、34歳まで世界のツアーを転戦した(写真提供:杉山さん)

「堂々と謙虚に」という姿勢が大事

田中 私はワールドカップやオリンピックにメンタルコーチとして帯同する機会がありますが、大きな競技会では、選手はもちろん監督にも重圧がかかります。記者会見にあたり私が選手や監督によく申し上げるのは、「自分の本音を10割しゃべらずに、2割で十分という意識で」ということ。それから「堂々と謙虚に」という姿勢が大事だともお伝えしています。

杉山 すごくわかります。無理にすべてをさらけ出さなくても、見ている人にはちゃんと伝わる。「堂々と謙虚に」も大切だと思います。最終的にはメディアというより、その向こうにいる人たちに「また頑張りますから、どうか応援してください」と伝わるのが望ましいのですから。

田中 プロアスリートなら、「こういう答えがほしい」ということが伝わるような質問を受けますね。

杉山 ええ、ええ。

田中 それに対して、「期待されている自分になるな、期待されていることを意識するな」と私は言っています。トップ選手は真面目だし、謙虚でないと上にいけない。だから相手の要求に合わせて一所懸命に答えようとしてしまい、そのために疲弊する。

杉山 本当にそうです。スポーツ選手なら誰でも大きな浮き沈みはあると思います。私も、調子がいい時には誰にでも勝てるのではないかと思うぐらい前向きな気持ちになりました。半面、どん底で調子が悪い時はしばらく誰にも会いたくない。スーパーで食料を買い込んで、3日間は完全に引き籠もれる態勢を作っていました。

田中 スポーツの中でも、テニスのような対人で長時間の個人競技は特に波が大きいかもしれません。