田中ウルヴェ京さん(左)と杉山愛さん(右)
テニスの大坂なおみ選手が四大大会の一つである全仏オープンで記者会見を拒否。罰金を科され、2回戦を棄権した。自身のツイッターで「長い間、うつの症状に悩まされている」との告白も。オリンピックをはじめ世界の舞台を経験し、今もスポーツ界を支える杉山愛さんと田中ウルヴェ京さんが、トップ選手の心理を考察、メンタルの健康を保つ秘訣まで語り合った(構成=古川美穂)

<前編よりつづく

自分を見つめ直す心理トレーニング

田中 選手に必要な心のトレーニングは大きく分けて2つあります。1つはメンタルスキルトレーニングのアプローチ。感情のコントロール法とか、リラクゼーション法などですね。もう1つが実存スポーツ心理学のアプローチ。選手はメンタルトレーナーと一緒に、「競技をする意味」「会見をする意味」「人生の意味」など、広くさまざまなことの意味づけをしていく。

杉山 それは私が現役を引退した後に、京さんにやっていただいたセッションと同じですね。じっくりと深く話を聞いていただいて、本当に有意義な時間でした。

田中 そうです。選手だけでなく、どんな人でも自分の進路を見つける時に使えます。「自分という人間をさまざまな角度から見ること」をお手伝いするのが実存心理学的アプローチです。

杉山 私は引退後、自分がこれからどこに行くか本当に迷っていた。解説のお仕事やテニスを教える場もあり、傍から見たら順調なセカンドキャリアを歩んでいたかもしれませんが、心の中ではすごく葛藤があって。

そんな時に京さんからいろいろな切り口で質問していただいたんですね。自分の考えをどんどん口にしていったことで、「新しい仕事や若い人の指導も重要だけど、今の私はとにかく結婚して子どもがほしかったんだ」と気がつきました。