ものを減らすより、お金の情報をひとまとめに

「終活」という言葉が定着して久しい今、「家族に迷惑をかけてはいけない」という思いから、積極的に生前整理を始める人が多いようです。その一環として、持ちものを減らす人も増えましたが、本来の「生前整理」は家の片づけを指しているわけではありません。ものを減らすことよりも、自分の「情報」をまとめておくほうが大切。ですから、「ものを片づけなければ……」と途方に暮れなくても大丈夫です。

とはいえ、ものが溢れたままでよいというわけではありません。死後の諸々の手続きの必要書類が見つからないなど、遺族に負担をかけるのも事実。遺品整理を業者に依頼するとお金もかかりますし、家族が片づけるにしても大変ですから、思いやりとして不要なものはできるだけ処分しておきましょう。価値のあるものは子どもに譲っておくか、いらないと言われたら売ってしまうのも手。遺品整理の際に金銭的価値のあるものが出てくると、揉める原因になるケースがあるからです。

では、整理すべき情報とは何か。年金や健康保険、住民税など「役所関連」、不動産や生命保険などの「契約書関連」、医療費などの「領収書」。そして通帳や株取引など「金融機関関連」のもの。これらの情報は種類別に「保管場所」がわかるようにしておきましょう。ファイルなどに丁寧に整理しなくても、封筒や箱に書類を放り込んでおくだけでもかまいません。ただし、財産額がわかるものは、信頼できる人にのみ伝えておくように。「どこに何があるかわからない」のが、遺された家族が一番困ることなのです。

最近は紙の通帳が有料化され、ウェブ通帳に移行しているケースが少なくありません。しかし、どこの銀行にいくらあるかわからないと預金額の把握が必要なときに困るため、できれば紙の通帳を持つのがおすすめ。定期預金がある場合は、普通預金に移しておきましょう。というのも、定期預金は本人が窓口に行かないと解約できないため、介護費用などでお金が必要になった場合に家族が引き出せずに困ってしまいます。

不動産に関しては、遺言書で「長男に相続させる」と一方的に書いたところで、当人が相続したくないというケースも。相続で不動産をもらっても、持ち家がありその家には住まないうえに、売却価値すらない場合があるからです。

逆に、「面倒をみてくれた次男に譲りたい」と遺言を遺して、子ども同士が揉めるケースもあります。不動産をどうするかについては、自分の意思を押しつけることで家族が困ることがあるため、可能なら事前に話し合っておくほうがよいでしょう。