7月に表参道のサンクチュアリでインタビューに答えてくれた江原さん (撮影◎本社写真部)
8月も台風や線状降水帯によって、全国的に豪雨が続き、各地で被害が出ています。東京から静岡県・熱海市へ本格的に居を移して1年あまりになる江原啓之さん。伊豆山地域で土石流災害を引き起こした2021年7月の豪雨に「今までにはない恐怖を感じた」と言います。今回の記録的な大雨を体験してわかったこと、これからの災害に備えるヒントを聞きました(構成=やしまみき 撮影=本社写真部)

報道と現地の体感は違う

7月の大雨災害の被害に遭われた方には、心よりお見舞い申し上げます。私が住む熱海でも土石流災害が起こりました。熱海にご縁をいただいてから8年あまり。今回の災害について、報道だけではわからない現実を熱海市民のひとりとしてお伝えしたいと思います。

まず私が感じたのは、テレビなどで報道されている印象と、実際に住んでいる人間の体感に大きなギャップがあるという点です。ニュースや気象情報では、今回の雨を「一時的に起こった記録的な大雨」と簡単に報道していましたが、私の感覚では「恐怖を感じるほどの大雨」というのが実感でした。

とくに土石流災害が起こった日(7月3日)の直前は、バケツをひっくり返したような雨が丸2日降り続くという状態。弱くなったり強くなったりを繰り返す降り方ではなく、エンドレスの豪雨だったのです。

私が住んでいる昌清庵(まさきよあん)は木造の古民家。屋根に当たる雨音がよく聞こえます。昼も夜も休みなく、ダダーッと打ち付ける雨音は経験したことのないものでした。しかも災害の数日前から長雨が続いており、側溝から水があふれたり、近所の道路が崩れて車が通れなくなったりしていました。地盤がかなり緩んでいるのが目に見えてわかったのです。