平均4つの問題を抱えて
NHKが行ったアンケート調査では、女性の26.3%、つまり約4人に1人が「解雇や雇い止め」「労働時間の減少」などに追い込まれていた。「収入が5割以上減少した」女性は15.4%(男性は8.1%)、「『休業手当』が支払われていない」のは女性が25.6%(男性17.6%)となっている。職を失った女性の4割近くは再就職していないと答え、男性を大幅に上回った。
また、全国の配偶者暴力相談支援センターなどの相談窓口に寄せられた件数は前年度より約1.6倍多い19万件に上るなど、在宅時間が増えたことによるDVの増加も明らかに深刻化している。
自殺に至るまでの過程は、決して単純ではない。
「どんなケースであれ、それは追い込まれた末の死です。我々は自殺で亡くなった523人について、お一人ずつ関係者への聞き取り調査を実施しました。その結果、職業や立場によって自殺を選択するまでの経緯は違うのですが、それぞれにある程度の規則性があることや、一人の方が平均4つの問題を抱えて亡くなっていることなどがわかりました」(清水さん)
なかでも多いパターンは、こうだ。まず何らかの経済問題が起きる。次に雇用や暮らしの困難に進む。人間関係や家族間の問題が生じる。そして最終的に心の健康が損なわれて、自死を選ぶ。
「自殺というのは決して特別な人が特殊な問題を抱えてするものではありません。日常的な悩みが深刻化し、そのことでまた別の問題を抱え込み、さらにそれが別の問題を生む、というふうに連鎖して起きる。我々の日常と地続きなんです」と、清水さんは言う。