弱いものにしわ寄せが行く
生きづらさを抱えた自らの体験を綴った『この地獄を生きるのだ』などの著書を持つ小林エリコさん(44歳)は、20代から30代にかけて4回の自殺未遂をしている。
最初は21歳のときだった。
「いろいろな要素が絡んではいますが、一番の原因は完全に『貧困』だったと思います。当時は編集プロダクションに勤めていたのですが、今でいうブラック企業でした。毎晩遅くまで働いても残業手当は一銭もつかず、月給12万円。正社員なのに保険にも加入させてもらえない。けれど私はほかに社会経験がなかったし、当時はインターネット環境もありませんから、自分が置かれている状況が異常だとわからなかったのですね」
貧困が恐ろしいのは、お金がないために人との縁まで切れてしまうことだと、小林さんは言う。
友人と喫茶店や居酒屋にも入ることができず疎遠になる。職場以外に人間関係を広げる余裕もない。給料日に一人で回転寿司店に入り、財布と相談して一番安いネタを3皿だけ食べて出てきたときの哀しさは今も忘れられない。
「決行する日は1ヵ月ぐらい前から決めていました。会社で抱えていた仕事がすべて片付いた後に、『よし。これで今日死ねる』と。我ながら、真面目すぎるんですね」
うつ病になるのは基本的に生真面目な性格の人が多い。だがうつ病になると頭の回転や動作が鈍り仕事の能率が下がったり、夜眠れなくて遅刻が増えたりする。そのため社会的には怠けていると見做されがちだと、小林さんは続ける。
「悩みがあってもちゃんと眠れて食べることができるときは、この状況はおかしいと自分でもわかるんです。でも忙しすぎたり、眠れなかったり、うつ病などの精神疾患にかかると正常な判断が下せなくなってしまう」