「日本では、《赤》って言えばみんなふんわりと分かってくれ、それでなんとか会社まで入れてしまう。」(三森さん)

三森 「赤が好き?」って聞かれて「うん」しか言えない子が、ドイツで暮らせるかというと……。

サンドラ きびしいでしょうね。

三森 それはなぜかというと、頭の中に、もうそれ以上発想がないんです。「赤が好き」とだけ言えば、周りの人が察してくれるに違いないと思ってしまっている。ドイツをはじめとした欧米では、その部分の言葉の教育がきちんと体系化されて行われている。

対して日本では、「赤」って言えばみんなふんわりと分かってくれ、それでなんとか会社まで入れてしまう。

サンドラ 日本人の多い会社で、タイの人が日本人の同僚に何か相談を持ちかけて、「ちなみにこの件は部長には言ってないので、よろしくお願いします!」って書いたそうなんです。その意味するところは「部長には言わないでください」だったんですけど、それを受けた日本人の同僚の返信は「わかりました。私から部長に言っておきます!」だったそうで。この「よろしくお願いします」っていうのはどっちとも取れるから、こわいですよね。

『ビジネスパーソンのための「言語技術」超入門』(三森ゆりか:著)