「まず日本語で意識していないと、英語にはできない。言語の問題だけではなく、思考の問題ですね。」(サンドラさん)

責められている、馬鹿にされている気がするのは

三森 私は、企業からの研修依頼もとても多いんです。外国系の企業に吸収合併されたある日本の会社から依頼があった時、研修担当の方がおっしゃるには、「吸収合併されて以来、常に外国人に日本人が責められている気がする。責められているだけじゃなくて、彼らに馬鹿にされているような気もする。それはもしかしたら、言語技術に関係があるのでは」と。

そこで6時間言語技術のエッセンスをかいつまんで講義をしたところ、最後に参加者の皆さんの顔が明るくなったんです。皆さん、「自分達の話が曖昧だったので、質問されていただけだったんですね。それに気がついただけでもよかった」っておっしゃったんです。後日どうなったかも聞いてみたところ、日本人の側も果敢に質問するようになったと。

サンドラ お互いに質問をするようになったんですね。

三森 自分の話が分かりにくかったと受け入れることができ、馬鹿にされているのではなく単に質問されていただけだと腑に落ちたということですね。サンドラさんは、日本で暮らしていて、質問の分量がドイツと違うということを意識されたことはありますか。

サンドラ 確かにドイツ人の方が突っ込んだ質問をしてきますね。例えば、どこそこの店で見たセーターが可愛かった、と言いたい時は、「そのセーターは正面にこういう模様がついていて、こういう袖だったから可愛かった」と言わないとわかってもらえない。

私はドイツで育ったから慣れているので、聞かれたらなるべく詳細に全部説明して、特に気にはならないんですけど。確かに日本人だとそこまでは確認しないかもしれないですね。