「以心伝心」はかなり危ない

三森 「以心伝心」というのは、会社で仕事する場合にはかなり危ないですよね。私はこれはどっちの「よろしくお願いします」なんですか、っていちいち聞き直していたので、同僚に「君はドイツ人だ」なんて言われたりしました。でも間違ったら終わりだから、確認をするほうが無難ですよね。

それに「以心伝心」ってドイツにだってありますよね? いわゆる暗黙の了解をしたり、黙っていた方が良い時には、状況をちゃんと捉えたうえで口を出さないでいてくれる。

サンドラ 言語的にもドイツ語は日本語ほどハイコンテクストではないんですが、みんな全然空気を読まないかというとそうでもなく、特に宗教関連では空気を読む人が多いですね。

明らかに名前や見た目で「あの人はトルコ系のドイツ人だ」ってわかる時に、おそらく日本の一般的な感覚だと「もしかしたらトルコの方ですか」とか「どこ出身ですか」とか、きいちゃうと思うんですけど。

ドイツの人はそこの空気を読むというか、「あなたはトルコ人ですよね」って口には出さないんだけれども、ランチの時には配慮して、豚肉が入っていないものを手配したりする。

三森 言語技術を教えていると、日本人から「西洋人は以心伝心できないでしょ」って言われたりするんですが……。

サンドラ よく言われます。

三森 これは本当に失礼な言葉だと思って。じゃあ日本人が「以心伝心」できるのかといったら、できない方は沢山いらっしゃる。

サンドラ 「本音と建前」もドイツではまた違う形であったりしますからね。

『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(サンドラ・ヘフェリン:著)