消防士の父と特訓の日々

阿部兄妹が注目されるきっかけになったのは、2017年12月の国際柔道大会「グランドスラム・東京」。初めて兄妹で《アベック優勝》し、取材を受ける2人にカメラマンが「お2人、もっと寄ってくださいよ」と注文をつけた。兄は「彼女やないねんから(笑)」と応じなかったが、妹はそっと身を寄せていた。仲のいい兄妹だ。

2人が育ったのは、神戸市兵庫区、和田岬駅近くの商店街。一二三と詩は3人きょうだいの次男と長女で、一番上に長男・勇一朗さんがいる。一二三がテレビで見た柔道に憧れ、少年柔道教室「兵庫少年こだま会」に兄と一緒に通い始めたのは、6歳の時のこと。最初は女の子にも負けて泣いていたが、逆立ちで道場を歩き回るなど、運動神経は抜群。

いつしか「一番になりたい」と目標を口にするようになった一二三を支えたのは、消防士でかつて水泳の国体選手だった父の浩二さん。柔道経験はなかったが、一二三のため、消防隊員の訓練などを取り入れた独自のトレーニングを考案。背負い投げをイメージしてチューブを引っ張ったり、重さ3キロの球を投げたりと親子で特訓を積んだ。

2人で今後の目標を語り合い、オリンピックについては「お前が19歳、23歳、27歳になる年にある。23歳はいけるな!」と未来をイメージさせたという。

こうして一二三は中学2年生で全国優勝、さらに高校2年生で出場した講道館杯で最年少優勝を果たし、一気に注目された。