「この先、《7040》の時点で親子の生活設計がどうなっているか確認する。そこをひとつの目安にしてもいいかもしれませんね。」(畠中さん)

海外では、ひきこもり行為は個性のひとつ

岩井 最近、ひきこもっている人を拉致のごとく矯正施設に連れていく支援団体が、問題になっていますよね。

池上 いわゆる「ひきだし屋」のことですね。ネットで支援団体を検索したとき、「3ヵ月でひきこもりを治します」とか「就職率97%」などと書いているところは、まず疑ったほうがいい(笑)。「治します」はありえませんから。

畠中 「就職率90%以上」とうたいながら、自社で経営しているカフェで働かせた形をとっているところを、見学したことがあります。

池上 立ち食い蕎麦屋とか。(笑)

畠中 費用も驚くほど高いんです。

池上 「3ヵ月で治します」と言って最初に500万円。「時間がかかりそうなのであと6ヵ月ください」と言ってさらに700万、そのあと1000万請求された人がいました。その直後、業者は倒産したので訴訟も起こせない。親子の関係も崩壊してしまいます。

畠中 お金の面でも人生設計が崩れるので立ち直れないですよね。

岩井 今日、お2人のお話を聞くまで、私は日本がこんなに福祉制度に厚い国だと思っていませんでした。行政のサポート以外に、家族会もあれば民間の支援団体もある。ご存じのとおり私は東南アジアが大好きで(笑)、しょっちゅう旅してきましたけど、ひきこもりって日本特有の問題なんでしょうか。そもそも暑い国では、男はあまり働かんし。(笑)

池上 海外では、ひきこもり行為は個性のひとつと捉えられているので、問題にならないようですね。

岩井 私はこのとおりの人間ですから、自由奔放に生きてきました。だから自分を棚に上げて、息子に堅実に生きてほしいなんて願うのは、「おまえ何様だ」ということを百も承知なのです。ホンネを言えば、息子が「毎日楽しい」と思って生きてくれたら、それでいい。

池上 お母さんがそう考えているだけで、十分な心の支えですよ。

岩井 それが人間らしい暮らしじゃないか、そのためなら、永遠に夢を追い続けてもいいじゃないか、と本当は言いたいですよ。でもそう思えるのも、結局は先立つものがあるからなんでしょうね。

畠中 この先、「7040」の時点で親子の生活設計がどうなっているか確認する。そこをひとつの目安にしてもいいかもしれませんね。

池上 家族の誰かが家族会や支援窓口とつながっていることが、いずれ本人が立ち上がるときの支えにもなると思います。