ひとりで抱え込むと悲劇を生む
岩井 その脚本家さんも、子どもたちの状況を知られるくらいなら自分が詐欺に遭ったことにしよう、と思ったんでしょう。私に生原稿を売ったのも、一度しか面識のない浅い間柄でかえって頼みやすかったのかもしれない。親しい人には相談できない状況なのだと、ますます心配になってきました。お聞きしたことをうまく伝えますよ。
池上 社会的地位が高い親は、問題を隠す傾向にあります。すると子どもは、「自分は隠されるべき存在なんだ」と感じ、ますますどう生きていけばいいのかわからなくなる。精神的に追い詰められ、親子関係はどんどん悪くなります。
岩井 農林水産省の元事務次官が起こした事件を思い出しますね。
池上 行政のトップまで上りつめた方ですから、自分は助ける立場であって助けられる立場ではない、という思いがあったのでしょう。ひとりで抱えこみ、あのような悲劇を生んだのだと思います。
支援窓口はきちんと見極めて
畠中 いま私は月に4時間だけ、社会福祉協議会で働いていて、日本には多くの支援制度があることを改めて認識しました。返せなかったら返さなくてもいい貸付制度などもありますから、抱えこまず、社協にも相談してはどうでしょう。
池上 各都道府県と政令指定都市にはひきこもり地域支援センターがあります。また中核自治体には、先ほども申し上げた生活困窮者の自立支援窓口もあります。
畠中 池上さんが運営されているKHJ全国ひきこもり家族会連合会も、いいと思います。家族会につながれば「ひとりではない」と思えて、道が開けますから。
池上 ほかの参加者から「息子さんは、実はこんなふうに感じているんじゃないですか」と、自分では思いもしなかったような気づきをもらえることもあるようです。毎月学習会も開いていますから、親が勉強して情報収集できることもたくさんあると思いますよ。