頑なに冷房を拒否する高齢者の危険性

そもそも高齢者が脱水症になりやすい要因のひとつに、「暑さを感じにくい」ことが挙げられます。私たちの皮膚にある、「暑さ」と「寒さ」を感じるセンサー。冷感センサーのほうは皮膚の表面近くに多数ありますが、温感センサーはもともと数がそう多くありません。

年齢とともにどちらのセンサーも減っていき、最後は冷感センサーだけが残るため、暑さに対する感覚が鈍ってしまうのです。頑なに冷房を拒否する高齢者がいますが、実際の室温や外気温を感じ取れていない場合もあるので、非常に危険と言えるでしょう。

加えて、コロナ禍は脱水傾向に拍車をかけています。ひとつは、外出先でマスクを外せないため、水分補給を怠りがちになること。2つ目は、マスクをしているとのどが渇いた感覚を持ちづらい、ということ。マスクの中はスチームサウナで息をしているような状態。実際は渇いているのに、自分の呼気を吸って潤っていると錯覚を起こしやすいのです。3つ目は、長く続く自粛生活で、体内で最も水分をためておける筋肉量が減っていること。以上の理由から、コロナ下での生活では多くの人が脱水症に陥りやすいと言えるのです。

 

特に命にかかわるのは、脳梗塞や心筋梗塞

脱水症の症状は、脳、胃腸、筋肉に表れます。この3つは特に水分を必要としている臓器で、不足すると体は正常に機能しなくなります。たとえば夏バテで消化機能が低下すると、頭痛や倦怠感、食欲低下などを起こしがちですが、これも脱水症が原因のことが多い。熱中症の初期症状のひとつも脱水症です。脱水によって汗がかけなくなり、体に熱がこもって熱中症を引き起こします。

脱水状態になると脳の血流が不足し、めまいや立ちくらみ、ふらつきなどの症状が表れますので、転倒して骨折し、寝たきりになるケースも。特に命にかかわるのは、脳梗塞や心筋梗塞です。

体液が減り、血液がドロドロの状態になると、血管を詰まらせる血栓ができやすくなります。脳梗塞や心筋梗塞は、急激な温度差で血管が収縮する冬場に起こりやすいと思われがちですが、脱水が引き金となる夏にも多いことは、実はあまり知られていません。

ひとたび脳梗塞を起こすと、最悪の場合は命を落としますし、脳に血液がいかない時間が長ければ麻痺が残ったり目が見えなくなったり、後遺症がこわい病気です。

たかが脱水、と思われるかもしれませんが、このように多くの危険と隣り合わせ。水分補給を怠っただけでその後の人生が大きく変わる可能性があることを、まずは理解していただければと思います。