イラスト:花くまゆうさく
暑い時期は不調がつきもの。「よくあること」と放置して、ときに深刻な病となったり、「あれは病が見つかる前兆だったのか」とあとから嘆いたり。あわや、の思いをした人たちが得た学びとは(取材・文=島内晴美)

持病に気を取られて見過ごしたサイン

40歳ぎりぎりで高齢出産をしたサナエさん(60歳)は、産後の後遺症ともいえる持病と付き合ってきた。

「高血圧症です。自覚症状がないので、降圧剤を服用するだけ。もう20年の付き合いですから、朝晩血圧を測って数値が高かったら『あ、薬を飲まなきゃ』と思うくらいで、慣れっこになっていました」

5年前の夏は、降圧剤の服用を自分の判断でやめたり間引いたり、といい加減になりがちだった。

「夏場は血圧が下がることが多いので、すっかり油断してましたね。血圧が少々高くても、『今日は暑いから』としか思わなかったんです」

しかし異変は血圧だけではなかった。ぶつけた記憶がないのに手足に内出血したような青あざができていたり、お腹回りだけ急に肉がついてきたり。

「疲れやすいし何だか変だなとは思ったんですが、夏バテが続いているのだろう、と。病院に行こうとまでは思いませんでしたね。娘がちょうど高校受験を控えていた時期だったので、自分のことはついつい後回しにしていたんです」

そんなときに、何でもない段差につまずいて転んでしまった。

「ただ地面にひざをついただけなのに、びっくりするくらい広範囲の皮膚が剥けて、大量に出血してしまって!」

サナエさんを診た外科医師は、皮膚の状態に異常を見て取り、「ここまでなるのはおかしい。紹介状を書きますから、すぐ大学病院に行ってください」と慌てた様子で告げた。

「大学病院で診断されたのが、「クッシング症候群」という聞いたこともない病名で、びっくり。主な症状として、皮膚が薄くなり、腹部肥満や筋肉が衰えると聞かされて、ああ、まさに……と納得しました」