副腎の腫瘍を手術で摘出
クッシング症候群とは、副腎皮質ホルモンが慢性的に過剰分泌されて起こる難病だ。進行すると、糖尿病やうつ病などの合併症を引き起こすという。高血圧も症状のひとつだったが、「持病と夏バテ」とサナエさんが思いこんでいたために気づけなかったのだ。
「私の場合、クッシング症候群になった原因は、2つの副腎のうち片方にできた腫瘍でした。そのせいで副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されていたんだとか。治療は副腎を摘出する外科手術しかありませんでした」
幸い腫瘍は良性だったが、検査から手術まで2ヵ月を要する。その間、夫は会社を休職し、家事や娘の受験のサポート、病院通いに大奮闘した。
「ちょっと驚いたんですが、毎日面会に来てくれて。ありがたかったです」
だが本当の《闘病》は退院後だった。片方の副腎を摘出したあと、残された副腎が正常に機能するまで時間がかかったという。
「副腎皮質ホルモンは、人間が生きる活力の源になるため、《生命維持ホルモン》とも言われるそうです。一つになった副腎がホルモンを正常に分泌するようになるまで、起き上がることもできず、ほとんどベッドの上で過ごしました」
内服薬でホルモンを補充すれば起き上がれるが、不足してくると寝込んでしまう。そんなことを繰り返しながら、徐々に自力で分泌できるようになるのを待つ時間が1年も続いた。
「持病があるからこそ、かえって症状を甘くみてしまった。素人判断を反省しています」
無自覚だった夏の日々を思い出すと、今でもゾッとするという。