若い時には多様な価値観を持った友だちがいるのがいいが、老人にとってのよき友とは、衣食住の価値観に大きなズレのないのがいい。もはや主義主張の異なるところに順応するエネルギーがないのだ。お昼はお蕎麦でいいわね、いい、いい、それでまとまるのがいい。

二足歩行が出来、誰かの手を借りずに自分のことができるあいだは、老人優等生だといえる。老いてますます元気、趣味三昧で老いは楽しい、そんな老人もいるにはいるが、そうばかりではないのが老いの現実である。

何で読んだのか、若い介護職の女性が「わたしの一日は26人の老人のおむつを取り替えることから始まります」とあるのを読んだ。そのとき、いつ自分が27番目のおむつの主になっても不思議ではないという老いのリアリズムを思った。

そんな現実を思うにつけ、そこそこの赤提灯で俳句談議に耽る友だち、わが句に鞭をくれる友だち、同時代を過ごしてきた学友、加えて長く句会吟行を続けてきた俳句仲間、そんな彼や彼女たちこそがわが心身の賑わいであったのだと思い至るのである。

友だちは一朝一夕にはできない、そんな古い箴言があるが、これは本当のことのようである。