パターゴルフを続けていれば…

内田 弟さんとふたり暮らしで、ときどきショートステイを利用していた90代の男性がいらしたのですが、今年に入って弟さんがご自宅で突然亡くなってしまった。新聞配達員が異臭に気づいて通報したら、ご本人は弟さんのご遺体のそばで2週間、飲み物だけで過ごしていたことがわかったんです。

藤井 まあ。

坂本 それはお気の毒に……。

内田 ふたりで家に籠もっている間に認知症が進んでしまったようなのです。コロナ以前は公園で仲間とパターゴルフを楽しんでいたと聞きましたから、その生活を続けていればこんなことにはならなかったのにと思うと、つらいです。

坂本 全国的に感染拡大が収まらず、長い闘いになっていますが、一番苦労した時期はいつですか。

藤井 最初の緊急事態宣言が出た2020年4月から5月にかけてのころでしょうか。コロナがどんな病気なのか、どう対応したらいいのかもさっぱりわかっていませんでしたから。

坂本 最初はすべてが手探りでしたよね。

藤井 うちは特養のほかにグループホーム、小規模多機能型の施設も抱えているのですが、入所者とデイサービス利用者が接触しないように気を使いました。出入りが激しいデイは感染リスクが高いので。でも、お風呂場までは分けることができなくて、デイの入浴利用者が触れた椅子や手すりを逐一消毒して回ったり、浴場に誘導するまで時間を空けたりと苦労しました。

内田 発熱の基準を決めるのも大変だったのでは?

藤井 そうなんです。うちの法人では、熱が37度4分以上だと「コロナ疑い」と認定する決まりになっていますが、高齢者は平熱が高めの方が多いので、ちょっとしたことでも37度を超えてしまう。なので数字で判断するのではなく、咳はしていないか、食欲はあるかなどよく気を付けてあげないといけませんでした。

いまは感染対策のマニュアルができて、ルール化されているのでやりやすくはなったけれど、職員にゆだねられているな、と感じるところはまだまだあります。