両親は「特別なことは何もしていない」

大谷翔平の人間性は、いかにして育まれてきたのか。その答えは、少年時代をひもとけば見えてくる。父・徹さん、母・加代子さんの両親は、幼い頃から彼の決断を優先し、おおらかに育てた。

翔平は、3人きょうだいの末っ子だ。父は、末っ子を「叱った」記憶がほとんどない。どの家庭もそうだろうが、特に歳の近い幼いきょうだいというのは他愛もないことでよくケンカになるものだ。大谷家の場合は「姉弟ゲンカ」だった。2歳上の姉と翔平は、幼い頃はよくケンカをしたのだという。父の言葉だ。

「歳が近かったこともあって、二人はしょっちゅうケンカをしていましたよ。親からすれば、本当に他愛もないものです。そんなケンカで、どっちもダメじゃないかと二人を怒ったことはありましたけど、それぐらいですね。翔平が何か悪いことをして怒ったことはないですね」

翔平が幼稚園か小学校に上がったばかりの頃、当時流行した映画『ハリー・ポッター』のグッズをめぐって、末っ子は泣きわめいたことがあったという。母が、かつての記憶を辿る。

「たしか映画のキャラクターが描かれたノートですね。表紙のところに買った当初から少しだけ剥がれちゃっていた部分があったんですよね。翔平は、それが気になるから自分で色を塗ってみたんですけど、思い通りにいかずにさらにおかしくなって泣いて、怒って。

絵本なんかでもそうでしたね。お気に入りの本の端っこが少しでも折れちゃったりすると、気になって気になって、しょうがないみたいで。『誰が折ったんだ!』みたいな勢いになっちゃうこともありました。

翔平が感情をむき出しにして怒るとしたら、自分が大事にしていたもの、持っていたものが傷ついたり、壊れたりする時。でも、それぐらいでしたね。私たち親がガーッと怒らなければいけなかったことは、考えてみると本当になかったと思います」

翔平自身にも、両親から怒られた記憶はほとんどない。父は、所属していたリトルリーグチームの監督でもあった。

「お父さんから怒られたのは、グラウンドでの野球の時だけですね。家に帰ってからは、ほぼなかったと思いますよ」