「童話を書くこと」が救ってくれた

俊子さんの人生は苦労の連続だった。夫が42歳で独立して60歳まで会社を経営するも、負債を抱えて資金繰りに苦労する日々。そのため、いまも夫婦で一間の賃貸アパート暮らしだ。

「会社も潰し、貯金も食い潰して、金なし、家なしでここまで来ました。私も30代から働きどおしで、いまだに仕事をやめられないんです(笑)」

夫婦の年金だけでは家賃や生活費が不足するため、月5万円ほどのパート収入が不可欠で、77歳のいまも早朝の清掃パートを続けているという。

家事に子育てに仕事にと満身創痍で生き抜いてきた俊子さんを、さらに大きな不幸が襲ったのは10年前のこと。

「同居していた息子が心臓発作で急死してしまったのです。ショックで涙も出ませんでした。落ち込む私に追い打ちをかけるように、夫が病に倒れ介助が必要になってしまって、すべてのことが私の肩にかかってきてしまった……。逃げたくても逃げられない状況が続いています」

そんな俊子さんを救ってくれたのが《童話を書くこと》だった。現実の生活に行き詰まるなら、せめて空想の中で逆転していけばいいと考えたのだ。