苦しい、貧しいからこそ
「文章が好きで本当によかった。童話を書いていると、心が自由になっていきますから。こうしたいな、ああしたいなということを想像し、童話として表現する面白さに出合えて、またひとつ人生を楽しむ術が増えました。書き物をしている私を見て『作家気どりだな』と夫は笑うけれど、そんなことは気にしません。結婚してからの生活は苦しいことが多かった。
でも負け惜しみじゃなく、《貧しい》ということが、童話を書く原動力になっているような気がします。仕事や家事や夫の介助のわずかな合間を見つけてでも、自分の幸せのために書いていきたい。それに原稿用紙さえあればいいので、お金のかからない、いい趣味ですよね。ひょっとしたら、採用されて賞金をもらえるかもしれないし(笑)。私にとっては一石四鳥です」
ファンタジーは、逃れられない苦しい現実の中からこそ生まれる。「『貧乏暇なし』という言葉があるけれど、『充実した老後』と言い換えることもできますよね」と笑う俊子さんの童話が、いつか日の目を見るときがくるに違いない。
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老後こそ人生逆転のチャンスなのか。3人の話を聞き、命が続く限り、いつでもスタートが切れるのだと気づかされた。新たな門出を邪魔するのは、「もう歳だから」と決めつける自分自身なのかもしれない。