イラスト:カワムラナツミ
何かを始めるのに年齢は関係ないというけれど、「やりたいことが見つからない」「体力がない」「この歳でできることなんてない」などと諦めてしまう人は多いもの。70歳を超えてから生きがいを見つけた3人の女性に話を聞いてみると、そこには人生を楽しむ秘訣がありました(イラスト=カワムラナツミ)

主婦歴50年の技術で飲食店店主に

そろそろ現役を退いて、老後はのんびり過ごしていこうと多くの人が考える年齢でお店を開いた人がいる。加藤君子さん、76歳。三重県でこだわりの卵を使った料理店「日本一こだわり卵のお店 ひまわり」(以下、「ひまわり」)を始めたのは4年前のこと。評判を聞いて遠方からわざわざ訪れる人も多く、経営は順調だという。

「自宅で料理教室を開いていた縁で、友人に『一緒に飲食店をやらない?』と誘われたのがきっかけでした。好きな料理を作ればいいだけなら、と気軽にOKしたのですが、開店半年ほどで友人が体調を崩してしまって。結局、私ひとりでお店を切り盛りすることになりました。息子たちには、『いまさら何をするんだよ』って言われましたけど……(笑)」

ひょんなことから経営者となった君子さんだが、週5日、ランチタイムを中心に営業している「ひまわり」を切り盛りする姿には屈託も気負いもない。

「主婦歴50年以上。料理の腕や調理の段取りには自信があります。夫や3人の息子、同居する義父母においしくて体によいご飯を食べてもらおうと、食材にもこだわってきましたから」

メニューは、卵かけご飯と味噌汁、漬物、日替りの総菜2品の定食と、定食にシフォンケーキが付くケーキセットの2種類。店名にもあるように、卵は兵庫県から取り寄せる「日本一こだわり卵」を使用している。ビタミンE含有量が一般の卵の30倍もあるのだとか。

「25年ほど前に出合ったこの卵を、わが家でもずっと食べてきました。バターやベーキングパウダー不使用のシフォンケーキも、この卵だから作れるメニュー。本当においしくてびっくりすると思います」

また、味噌や漬物、卵かけご飯用の出汁醤油も自家製というこだわりようだ。

「78歳の夫も、リタイア後に老人ホームの宿直の仕事をしています。夫婦揃って、じっとしていられない性分なのかも」

と笑う君子さんだが、お店をオープンする前まで、夫の両親を8年、在宅で介護した経験をもつ。