休むよりも好きなことを
「義母は最後の1年半は寝たきりで、食事の介助からおむつ交換まで何でもやりました。義母には昔、子ども3人のおむつを換えてもらうなど助けてもらいましたから、そのお返しです。でも、自分の好きなことをする時間はどうしても削られてしまう。介護の合間を縫って、自宅での料理教室を続ける努力はしました」
介護の苦労や疲れを癒やすために、休むのではなくあえて大好きな料理をするという選択が君子さんらしい。しかし義母を看取った後に介護ロスに陥り、何も手につかなくなってしまったという。
「義父母はもういないのに、癖で部屋に行ってしまったりして。心に大きな穴が開いたようでした」
だから開業の誘いを受けたとき、断るという選択肢はなかった。
「いまは毎日が本当に充実しています。ケーキが焼き上がるまでの30分すら惜しくて、その間に銀行の用事を済ませたり、スーパーに走ったり。私、立ち止まると死んじゃう回遊魚なんです(笑)」
家事は段取りが要。これが君子さんのモットーだ。いんげんの筋を取るときは、鍋で湯を沸かしながら。ごぼうは買ってきたらすぐに洗って切り、水を入れた保存容器で保存しておけば、その間にアク抜きができるなど、次々と家事の裏ワザを教えてくれる。
「今後はお店を続けながら、出張料理人をしたり家事を教えるセミナーを開いてみたいですね。元気なうちはなんでも挑戦したいと思っています」
まだまだエンジン全開の君子さん。今日もフルスピードで回遊しているに違いない。