東北地方から大恩寺を訪れたベトナム人女性の話を聞くタム・チーさん
超高齢化し、労働人口が減る一方の日本社会で、外国人労働者たちはすでになくてはならない存在となっている。技能実習制度を使って来日した若者たちも多いが、今般のコロナ禍では、日本人同様、彼らも苦境に立たされた。在日外国人労働者数として最多のベトナム人も例外ではない。困窮する彼らの衣食住を支援してきた埼玉県のベトナム寺院で現状を取材した。(取材・文:樋田敦子 撮影:本社写真部)

パスポートやビザを取り上げる

リンさんをはじめ、数千人のベトナム人を支援してきた大恩寺住職のタム・チーさんが言う。

「実習生たちは日本人のやらないきつい仕事を、安い給料でやっています。たとえば皆さんの食卓に並ぶ新鮮なレタス。たくさん収穫できても、それを仕分けたり箱詰めしたりする労働者がいなければどうなるでしょう。腐ってしまいますね。工事現場で働く外国人がいなくなったら……?

実習生はもはやなくてはならない労働力なのに、日本語が通じないこともあって、低賃金で働かされたり、暴言を吐かれたり身体的な暴力を受けたりと、ひどい目に遭うケースも起きています。いじめを受けたトラウマから心の病になった子もいました」

ひどい会社になると、パスポートやビザを取り上げ、逃げ出さないようにするという。

一般的には実習生として3年間働く間、最初の1年半で借金を返済でき、残りの1年半で150万円を故国に持ち帰ることができると言われている。いい企業に当たって、終了後にはベトナムで小さい家を購入できるほど稼げた人もいる。しかし多くは、日本でのバラ色の生活を信じていたのに、来たらブラックだった──というのが現実だ。