超高齢化し、労働人口が減る一方の日本社会で、外国人労働者たちはすでになくてはならない存在となっている。技能実習制度を使って来日した若者たちも多いが、今般のコロナ禍では、日本人同様、彼らも苦境に立たされた。在日外国人労働者数として最多のベトナム人も例外ではない。困窮する彼らの衣食住を支援してきた埼玉県のベトナム寺院で現状を取材した(取材・文:樋田敦子 撮影:本社写真部)
解雇された実習生や妊婦が暮らす
7歳で得度したタム・チーさんは、20年に留学生として日本にやってきた。大正大学大学院修了後、国際仏教学大学院大学の博士課程を満了退学し、そこで11年の東日本大震災に遭遇する。ベトナム大使館の職員とともに被災地にいた実習生を救出し、都内の寺で保護した。
その後、ベトナム人が増えてきたことで、信者会を作り全国にあるベトナムの仏教寺院と連携し、地域での親交を深めた。14年に信者会を一般社団法人化。3年前に大恩寺を開山した。
大恩寺では、食料・生活、人道、医療・通訳、帰国、葬送の5つを柱にした支援を行ってきた。コロナ禍以降、1000人以上のベトナム人を保護。3つのシェルター(緊急避難所)も含めると2065人に上る。現在もリンさんら15人が寺で暮らしており、その多くは20代の若者だ。
筆者が20年の夏に訪ねたときは、解雇された実習生、妊婦、病人ら約80人が保護されていた。彼らは料理や掃除、寺の手伝いをしながら暮らしていた。その後、希望者は順次帰国。最近は近隣の農家や印刷工場から求人があり、17人が住み込みで働き、週末だけ寺に帰ってくる人もいる。ベトナム語が通じる環境で寛いでいる様子だ。
この1年9ヵ月で、信者会が全国のベトナム人5万5000人以上を対象に配ったお米は151トン、インスタントラーメンは6000ケースにも及ぶ。ベトナム人の困窮を聞きつけ、全国から寄付が集まった結果だ。