貯蓄「増」・消費「減」で、老後2000万円問題が解決!?

コロナ前から低迷していた日本経済への刺激策、観光立国への布石として期待されていた「東京2020オリンピック・パラリンピック」ですが、結局は原則無観客開催となり、経済対策としては尻すぼみに終わりました。

むしろ開催期間中の感染拡大によって医療体制が逼迫し、入院できずに亡くなる人が出るという事態にショックを受けた人も多いと思います。開催当時の菅義偉首相は政策理念に「自助」を掲げていましたが、コロナ禍における政府の対応に不安を感じてきた私たち国民も、いよいよ「自分の身は自分で守らねば」という覚悟が生まれたのではないでしょうか。

それを如実に示すのが、貯蓄額の推移です。内閣府の国民経済計算によれば、2020年に日本全国で消費されずに貯蓄へまわったお金は35.8兆円。コロナ前の19年は6.9兆円ですから、約5倍も伸びたことになります。一律10万円の特別定額給付金さえ大事に取っておかなければと考えるほど、国民の将来に対する危機感は強かったといえます。

さらに興味深い結果が表れたのが、総務省の「家計調査」です。17年には、高齢夫婦世帯(夫が65歳以上、妻が60歳以上)の1ヵ月の生活費は収入より約5万5000円多く、その赤字が30年続くと「老後の資金が2000万円足りなくなる!」と大騒ぎになりました。

しかしこの数字が20年の調査では、1ヵ月で約1100円の黒字に逆転。この状態を続けていけば、30年後にはむしろ「老後の資金に40万円のゆとり」が生まれる計算になりました。はからずも「老後資金2000万円問題」はいったん解決してしまったのです。

赤字が黒字に転じた理由として、まずコロナ禍で外食費や旅行費、遊興費などの支出が減少したことが調査結果からも読み取れます。家族以外の人と会う機会が減ったため、無理に最新の流行を追ったりブランド物を買ったりしなくなるなど、地に足のついた消費を心がけた人が多かったのかもしれません。

また同じ調査で、60歳以上の世帯で可処分所得が増えたというデータもあります。定年以降も職場にとどまったり、年金をもらいながらパートやアルバイトで働く、同居する子どもにお金を入れてもらうといった方法で収入を増やした家庭が多かったと思われます。