街で見かける高齢者より、はるかに生き生き

相手のことを考え、練りに練って作られた問題やゲームだからこそ、楽しめるのだろう。夢中になるあまり、椅子から立ち上がって身を乗り出す人も。

「ここに置くと3つだけど、こっちなら4つ取れる」

4人用のオセロ風ゲームの盤を真剣に見つめ、戦略を練っているのは、後藤芳子さん(仮名・83歳)。アルツハイマー型認知症で、いまは10分前のことを覚えていないのだという。斜めのラインを見事に自分の色にひっくり返すと、仲間たちから「すごいわね」と感嘆の声があがった。

別のテーブルでは、2人の女性が、積み上げた積み木を崩さないように一片ずつ抜き取って、最上段に積み上げるジェンガに真剣に取り組んでいる。

「ここ、取れるかしら」「そこ取ると崩れるよ」「こっちはどう?」と相手と会話をしながら、交代で一片を抜き取っていく。傍についているスタッフも、「うん、そこなら大丈夫」「上手にできたね」と合いの手を入れる。

見ていると、「あなたもやってみて」と誘いの声がかかった。「あ、上手、上手」と褒められて、つい楽しくなってしまう。いったいここはどこなのか、わからなくなってきた。軽度とはいえ、何らかの生活への支障があって要介護認定を受け、デイサービスを利用している方々だ。なのに街で見かける高齢者より、はるかに生き生きとしているではないか。