コミュニケーションツールとしても

書き取りの脳トレ問題やゲームをする以外にも、午後は近所に散歩へ出かけたり、近くの畑で芋掘りをしたりと、さまざまなプログラムが用意されている。個人の状態に合わせたリハビリや運動も取り入れて、座りっぱなしによる足のむくみゼロも達成中だ。

デイサービスで何を行うかはとくに決まりがなく、それぞれの施設に任されている。だから家に帰るまでの時間は有効に使い、利用者に楽しんでもらえるよう、試行錯誤を重ねているのだ。

「最初は市販の脳トレ問題集を使っていたのですが、認知症に配慮しているためか簡単すぎるものばかりでした。かといって、計算ドリルや知識を問うような問題は、戦時中、満足に学校に通えなかったような人もいるので不向き。難しいことはしたくない、と嫌がる人が多かったんです」

いろいろな脳トレ問題集を使った結果、カタカナを並び替える「文字並べ替え問題」なら、どんな人でも楽しんでできることを見出した。

「見ただけでなんとなく答えを推測できるので、時間をかければ誰でも解くことができるんです。ただ、市販のものには高齢者に聞き馴染みのない言葉が出てきたりして、問題を解く意欲がそがれてしまうことがありました。たとえば、リストラとか、マンゴーとか」

そこで日々、利用者と接している介護職員の経験をフルに活かして、高齢者が楽しめる脳トレを作ろうという話で盛り上がった。好きなスターの名前や、青春時代に慣れ親しんだ言葉を積極的に取り入れ、個人の好みに合わせて問題が作れるよう空欄も設けた。

「お孫さんの名前や好きな女優の名前など、その人の関心が高い言葉を使うと、そこから話題が広がって、コミュニケーションツールとしても役に立ちます」

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