（5ページ目）松本まりか「泣いて現場に通ったことも。厳しいおじいちゃんにスパルタで育てられ、育ちは色濃く〈昭和〉です」限界の壁を越えたい｜芸能

今は他愛もない時間が欲しい

私は30代後半になってようやく、この世界で自分を表現できる仕事をいただけるようになりました。今、自分の手にしたいものが手に入らず焦りを感じている女性たちに、私の体験が「大丈夫だよ」という励ましになるとしたら嬉しい。「自分が生きるため」だった私の表現したい欲求が、「誰かのため」に結びつくようになり、それが私の俳優としてのやり甲斐を以前よりも強固なものにしてくれました。

この頃多くの素晴らしいお仕事にめぐり逢い、少しずつ、私の満たされなかった思いが昇華されているように感じます。一方で、人の心を動かす俳優になるには、もっともっと精進しないといけないという思いもあります。でもこれからは自分を酷使して頑張るのではなく、自分の中心に自分の心を置いて、そこに耳を傾けることをしないといけないのかな、と。空っぽのまま走り続けることはできないと、壁にぶち当たってからやっと気が付きました。

プライベートを断つことで仕事に集中してきたのですが、今はそういう他愛もない時間がとても大切だと感じでいます。友達とご飯を食べたり、くだらないおしゃべりをしたり、あてもなく散歩をしたり。

もっと愛に溢れる人間になって、多くの愛をまた受け取りたい。私の中にはまだまだ癒されていない寂しさのパンドラの箱があって、いつかはそこも開いて中を見なくちゃいけないと思っています。自分を傷つけても頑張るんだ！　と思って走り続けてきましたが、今は大切なものを失わずに包み込むように生きていくことが目標です。これから40代になりますが、もっともっと変化できるように感じています。