青年実業家と悩める神童

反田恭平さんと同じく第2位となった、イタリア生まれのアレクサンダー・ガジェヴさんもまた、自由な幼少期を過ごしたという。「サッカーや読書、天文学も好きで、高校時代までピアノの練習は1日2~3時間が限度だった」と話す。

とはいえ彼が育ったのは、ロシア人の父、スロベニア人の母がともにピアノ教師という音楽一家。結果を受けて、子供の頃の師であり、コンクールに付き添っていた父親は、ガジェヴさんによると「これまで見たことがないくらい嬉しそうだった」そう。

反田恭平さんは、父は会社員、母は専業主婦という、音楽とは関係のない家庭環境に生まれた。しかし音楽の才能に気づいた母の計らいで、桐朋学園大学音楽学部附属子供のための音楽教室仙川教室でピアノを習い始める。やがて音楽の道を志すが、音楽高校や音楽大学への進学に反対する父親から、「コンクールで1位を取らなければ認めない」と言われ、都度その難題をクリアしてきた。

そして(共学の高校である)桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学を経て、モスクワ音楽院に留学。4年前からはワルシャワのショパン国立音楽大学で、審査員の一人でもあるポーランド人ピアニストのピオトル・パレチニさんのもと、研鑽を積んだ。

反田さんは、コンクール以前から音楽業界の注目を集めていた。それは、20代半ばの若さにして自ら録音レーベルを立ち上げたり、仲間たちとオーケストラを結成し株式会社を設立したりと、演奏活動以外でも音楽業界の活性化に努めてきたことによる。