「これは指導じゃない、暴力だ」
山口 東京五輪はコロナ下での開催で問題もたくさんありましたけれど、私にとっては大きな気づき、学びの機会となりました。それを次にどう繋げるか。たとえば、オリンピック開催には莫大なお金がかかります。
「ムダでは?」という意見もあるし、みんながみんなスポーツを好きなわけではありません。そういうなかで、お金をかけても余りある価値があるのかどうかを検証し、説明する必要が私たちスポーツ関係者にはあるわけです。
酒井 札幌市も30年の冬季五輪招致を目指しているようですが、五輪を考え直すきっかけにしたいですね。
山口 そのとおりです。
酒井 スポーツ界ではパワハラも大きな問題ですが、13年に女子柔道の強化選手15人が監督による暴力とパワハラをJOCに告発した際、山口さんは告発した選手たちをサポートされました。
山口 当時、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部の選手が体罰を受けて自殺、次いで、この女子柔道の告発があったのです。これらの事件をスポーツ界の危機として、見て見ぬふりをしてきた暴力やハラスメントの問題に皆で取り組み、結果的にJOCのような外の団体にも訴えられるシステムを整えることができました。内部で解決しようとしても、黙殺される可能性がありますから。
酒井 「これは指導じゃない、暴力だ」と言えるようになった、ということですね。