青木 :近頃はほとんどイライラしなくなりました。いや、今でも油断するとイライラする人間かもしれません。だから俯瞰で自分で自分を見張っているような感覚でいます。ゴルゴさんは昔からかけてくださる言葉が全部、優しかったです。
ゴルゴ :いや、俺だって昔より穏やかになったよ。マナー守らない人に怒ったりしてたもん。例えば、自転車停めてて、カゴにゴミ入れられたりしたらさ、昔なら怒ってたけど、今はゴミ箱探して捨てにいく。できる人間がやればいいんだと思っている。俺が怒ってそれを道に捨てたら、ゴミを押し付ける人と同類になっちゃう。
青木 :私も日頃から、見かけたゴミは拾うようにしてますね。
ゴルゴ :俺はさ、数年前にソフトボールの上野由岐子さんと会ったの。彼女は社会人球団に入っていて、キャリアがあるからすごく年下の選手たちと一緒にプレーしてるんだよね。でも見ていたら誰よりも率先してグラウンドの整備とかゴミを拾っている。「そういうことは後輩に任せてもいいんじゃない?」って俺が言ったら「いえ、気づいた人間がやればいいんです」って言っててさ。
あとから本で読んだら、上野さんもね、若い頃から身体能力はずば抜けていたらしいんだけど、ある時怪我をして介助なしじゃトイレにも行けない状態になって、周りの人にたくさん助けられてると知ったんだって。そういう挫折があって、彼女は人間性も尊い、真のスーパースターになっていったんだな。人間は「傷つく時」が「気づく時」なんだよね。
青木 :素晴らしいですね。
ゴルゴ :ごみは「御身」という字から来てて、自分自身なんだよ。そう思うと、感謝して捨てるようになるし、捨てるのが苦じゃなくなるよね。